「パーソナルスペース」
うつ病は家族のサポートが必要と言うけれど…
これは、私の夫(うつ夫)が、まだうつ病の闘病中だった頃の話である。
今でこそ、うつ症状はほとんど回復したが、数年前の夫は体調の浮き沈みが非常に激しかった。
普通に笑い合える時もあれば、全く会話ができない時もありで、パニコは最初そのギャップに戸惑いを隠せなかった。
よく、うつ病は家族のサポートが必要だと言われる。確かにその通りなのだ。
しかし、パニコは当初、このサポートの仕方をはき違えていた。
サポートとは、常に寄り添い手を差し伸べることだと思っていたのである。
でも、本来のサポートはそればかりではないことに、後々気づかされたのだった。
「何もせず、ただ見守ること。」それも、非常に重要なサポートになるのだと。
常に寄り添うのは余計なお世話!!
当初、パニコは何とかうつ夫を元気にさせたくて、必死にアプローチをしていた。
とにかくポジティブな言葉を投げかけてみたり、あちこち外出に誘ったりなど、誰かがそばにいてくれたらきっと心強く感じるはず、と勝手に思い込んでいたのである。
もちろん、寄り添ってくれる人が必要な時もある。でも、そればかりでは無いのだ。
そんなことも分からず、「何かしてあげたい」という思いが先行し、余計なお世話をくり返してしまっていたのだ(汗)
そのため、うつ夫に「重い!」と言われることもあったし、時には扉をぴしゃりと閉められたりすることもあった。
その度に、「こんなに親身になって考えているのに、なんて人の気持ちが分からない人なんだろう(怒)」とよく逆切れしていた(笑)
今思えば、パニコの方こそ人に気持ちを理解していなかったのだが、当時は必死だったのだ(汗)うつ夫にとっては、本当に余計なお世話でしかないことも多かっただろう。
パーソナルスペースを考える
そんなこんなで、手探り状態のまま過ごしてきたのだが、いつしかうつ病の症状には波があり、様々な段階があることが分かってきた。
そして、寄り添ったり声掛けしたりすることが有効な時と、逆効果になる時があることも次第に分かってきたのである。
人にはパーソナルスペースという「他人に立ち入られると不快に感じる領域」がある。
うつ夫の体調が良い時は、パーソナルスペースがオープンになっている。その時は、パニコは立ち入り、手を差し伸べることができる。
しかし、体調が悪い時は、パーソナルスペースが「立入禁止」になる。この場合は、たとえ家族であっても、中に入れないのだ(汗)
これを見極める力が、四コマで描いた必殺技「パニコズ・アイ」である(笑)
それまでの経験と観察によって身に付いたパニコの必殺技だ。
手を差し伸べるタイミングは見極めが大切
うつ病患者の家族にとって重要なのは、手を差し伸べるタイミングの見極めなんじゃないかと思う。
「今手を差し伸べる時か、否か!?」
これを間違うと、サポートのつもりでも、ただのお節介になりかねないのだ(泣)
そして、「立入禁止」の時は潔く身を引くのも重要だ。相手のパーソナルスペースに無理やり押し入って、手出し口出しするのは、ただの執着になってしまう。
相手が必要な時には手を差し出す。それ以外は何もしないで見守る。
それが、いつしかパニコが身に付けたサポートのスタンスだ。その方が、相手にとっても自分にとっても、心地の良い在り方なのだと気づかされたのだ。
何もしないことは、「見放す」のではなく「見守る」こと。
どうしても、相手のためになりたいと思うと、「何かする」ことを選択しがちである。
しかし、「何もしない」ことが相手のためになることもあるのだ。
「何もしない」というと、見放しているような冷たさを感じてしまうかもしれない。
でも、「何もしない」ことは「見放す」のではなく「見守る」ことだと思う。
相手の力を信じることなのだ。
この考え方は、うつ病のサポートを通じて学ぶことができたけれど、きっとこの先、子育てやその他の人との関わり方において、役に立つことだろう。
その当時は、苛立ちや歯がゆさがあったけれど、こうして学びに変えることができ本当に良かったと思っている。