うつ夫が会社で心掛けていたコミュニケーション、第4弾。
「雑談」「共感」「前置き言葉」に引き続き、今回は「I メッセージ」についてである。
「指導」=「ダメ出し」の落とし穴
「I メッセージ」は、様々な場面で重要視されるコミュニケーション術の一つだが、うつ夫もまた、「I メッセージ」で話すことを最も心掛けていた。
というのも、うつ夫の入社した会社は、以前の記事でも触れたように、上下関係で成り立っている職場だった。
そのため、社員指導やミーティングの場で行われることは、その大半が「ダメ出し」であった。
そう言えば、パニコも昔、「ダメ出し」という言葉を普通に使っていた時がある。
その当時は、「指導」=「ダメ出し」と捉えてしまっていたように思う。
しかし、よくよく考えれば、「ダメ出し」とは言葉の通り、ダメな点に注目することになる。
もちろん「ダメ出し」が必要な時もある。
相手の気づいていない部分を指摘することで、向上させることができるからだ。
けれども、そればかりだったらどうだろう?
ダメな点ばかりに目が向いていたら、やはりモチベーションも下がり、空気も悪くなってしまうことが想像できる。
そんな理由もあってか、会社を辞めてしまう人も少なくないのが現状だったと言う。
うつ夫が「I メッセージ」を大切にする訳
うつ夫は、このような状況にとても違和感を感じていた。
常に、お互いのミスやできていない点を指摘し合っている。
そんな空気感の中で、あまりいい気持がしなかったのだ(汗)
そこで、うつ夫が心掛けたことが「I メッセージ」だった。
「I メッセージ」とは、「私」を主語に置き、自分の想いや考えを伝える方法だ。
これは、普段からうつ夫が大事にしていることである。
なぜなら、「I メッセージ」は彼がうつ病を克服する際にも、非常に役立ったことだからだ。
うつ病当時の彼は、周りの否定的な言葉ばかりを拾ってしまっていた。
そのせいで心を痛めてしまったワケだ。
そんな中で、周りの否定的な言葉ではなく、自分の気持ちに焦点を置くために取りくんだことが、「I メッセージ」だった。
「I メッセージ」で自分自身のことを話す
うつ夫は、職場でも、改めてこの「I メッセージ」を意識して使ってみることにしたのだ。
特に、ミーティングなどの報告の場では、できるだけ自分自身のこととして話すように心掛けた。
ほとんどの人は、「皆さん、こういうことはしないでください。」とか「〇〇さんのここができていませんでした。」などと、自分以外の人に向けた、注意事項や指摘を口にしていたと言う。
そんな中で、うつ夫はひとり、他人へのダメ出しではなく、自分の内省として報告し続けた。
例えば、
「私は、〇〇に注力して行いました。その結果△△は良かったけれども、××という問題点にも気づきました。××の改善案としてA・B・Cの3点が考えられるので、今後これらを実践したいと思います。」
と言うように、自らを省み、自分の目標や改善点などをシェアするようにしたのだ。
それをしばらく続けていた結果、何と少しずつ変化が起こったのだとか!
潜在的にであれ、影響を受けた人たちが、うつ夫のように自分のことをシェアし始めたと言う。
それまで、外にばかり意識が向いていた職場の人たちが、自分自身に意識を向けるようになったのだ。
こうして、ミーティングにほんの少し活力が生まれはじめた。
これは、大きな変化である!
主体性を育む「I メッセージ」
もちろん、ダメ出しを主軸にした指導のあり方を完全に変えられた訳ではないが、こうしたうつ夫の小さな試みは、職場にとても良い影響を与えたのだと思う。
他人への「ダメ出し」ばかりでは、だんだん心が委縮して、受身の姿勢になり兼ねない。
しかし、「I メッセージ」は、自分の考えを大切にできるため、自律性や主体性を育みやすくなる。
それに、周りのモチベーションを下げることも無いだろう。
もちろん、「ダメ出し」がNGという訳ではなく、相手が気づいていないことを気づきに変えるためには必要である。
大切なのは、その時々の必要に応じたバランスであり、各自が主体性を持って自分の行動を考えていれば、自ずとそれはバランスが取れていく気がする。
こうしたうつ夫の密かな奮闘は、(おそらく、ほとんど気づかれてはいないだろうけど(汗))、我が夫ながら、本当にいい仕事をしたな~と、パニコは誇りに思っている。
自らの態度をもって伝えていくことは、根気のいることである。
でも、態度で示すことの方が、ただ言葉で言うよりも、より大きな影響を与えるのかもしれない、そう感じさせられた一件であった。